劇団musicai旗揚げ公演「人魚姫~或るかなわぬ夢の物語~」(2018/09/29,30 駒込ギャラリーLa Grotte)

劇団musicai旗揚げ公演「人魚姫~或るかなわぬ夢の物語~」
期間:2018/09/28(金)~09/30(日)全7公演
会場:ギャラリーLa Grotte (駒込)
演出:伊藤さやか
出演:三明真実、加賀爪智子、Nao、藤井彩也香、五反田之制作、服部雄太

劇団musicai(https://www.musical-musicai.com/)の旗揚げ公演「人魚姫~或るかなわぬ夢の物語~」を観に、駒込のギャラリーLa Grotteへ。初めての会場。9/29と9/30の2公演を観劇。9/30は大型台風の接近により最終公演を1時間30分繰り上げての上演。かなり慌ただしかったようです。劇団musicaiという小舟が繰り出すには大きすぎる嵐。しかし劇団musicaiは見事、この嵐を乗り切ったようです。





さて、どこから話し始めれば良いものか...まずは、劇の「空間」から話を始めます。

ギャラリーLa Grotteは半地下の空間で天井がビルの2回分くらいある。コンクリートむき出しの壁に、長い階段というシンプルな劇空間。
階段にベールがかけられていて、そのベールを階段の手前に被せることにより階段がトンネルのように見せたり、階段下や階段の奥に役者を潜ませることもできる。ベールがかけられていない状態だと、それは浜辺に下りる階段にもなり、舞踏会場に下りる宮殿の階段にもなる。床が狭い分、空間を上下に上手く使っている。

役者がそこで演技をしたり踊ったりするであろう床はタタミ3畳分くらいしかない。その空間を取り巻くように客席が作られている。それらを隔てるものは細い紐だけ、舞台と客席の距離はゼロ。
私はどちらかと言えば演劇はかぶりつきで観るよりちょっと遠めから俯瞰して観るのが好きなので、役者が目の前に迫ってくる、という感覚には大いに戸惑いました。
役者が目の前に迫ってくると、圧されるように感じるはずなのに、逆に引きずり込まれそうになる。この芝居の稽古レポで、「空間を食べる」という表現があったのですが、まさに空間ごと吸い込まれるかのような臨場感でした。

決して柔らかいとは言えない、なめらかとも言えない床。冒頭、その上で役者たちは「泳いで」いる。床の固さをまるで感じさせない。終演後、私は床の固さを手で触ってその固さやざらざわ感を確かめてしまいましたよ。

物語は、子供の頃からお馴染の「人魚姫」。この劇のポイントは「王子の不在」。王子役の役者さんの存在感がなかった、という意味ではありません。
人魚姫が抱いていたのは、まだ見ぬ世界への「憧れ」。その象徴として若くて美し王子様がいるかもしれないが、人魚姫が抱いていたものは、あくまでまだ見ぬ世界への好奇心。

人魚姫役は三明真実さん。げんこつ団では劇中に目まぐるしく役を変えていくのですが、今回のように1つの役を劇中通してガッツリ演じるのを観るのは久しぶり。今回は体全体を使った動き、ダンス、役者としての身体能力を余すところなく発揮していました。

私は三明真実さんは「声を発する」ことで役を創っていく役者だと思っているのですが、この人魚姫というのは地上で歩くための足を得るための代償として、その声を魔女に差し出してしまいます。声を発している頃の無邪気な人魚姫、そして声を失った後のひとを思いやる心も挫折も絶望も経験した人魚姫ががらっと変わる。
そして声を失った後に「声を発する」、その歌声、台詞、一言でいえば、可憐なのです。本当であれば私たちに聴こえるはずもない歌や言葉を発する、その1フレーズ1フレーズが愛おしい。そんな演技をゼロ距離で観れて良かった。

芝居はだいたい2公演観るともう十分と思ってしまうのですが、この芝居に関してはもう1回、いや何度でも観たいと思えるものでした。再演の話もあるみたいです。今度はまた違った空間でこの芝居を観てみたいと思いました。

元「紙テープ芸人」の部屋

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