「星の王子さま~かつて子供だった大人たちへ」上演応援パッケージトライアル上演 (2020/10/31 としま区民センター小ホール)

「星の王子さま~かつて子供だった大人たちへ」上演応援パッケージトライアル上演
日時:2020/10/31(土)20:10開演
会場:としま区民センター小ホール
出演:三明真実、藤井さやか、チェ・ユハ、伊藤さやか、春日玲、加賀爪智子、遠藤景子(劇団ムジカフォンテ )


劇団MUSICAIが「星の王子さま」をベースに制作したオリジナルミュージカルの素材を無料かつ著作権フリーで提供する「上演応援パッケージ」。劇団MUSICAI自身によるその試演を観て来ました。

来場者にプレゼントされた台本。台本を片手に芝居を観る、というのもなかなかない経験。


試演なので通しの芝居を見せるのではなく、まず演出の伊藤さやかさんが「上演応援パッケージ」の使い方、演出の意図、大道具や注目ポイントなどを場面ごとに解説し、実際にその場面を役者たちが演じてみせるという趣向。

伊藤さんが繰り返し語っていたのは「自由に想像の翼を羽ばたかせ」「役者の声や身体から湧き出るものを引き出し」ながら芝居を創っていく、ということ。

でも、あくまで素人考えなのだけど、例えば料理の初心者に「ニンジンにタマネギ、牛肉にスパイス一式素材をお渡しします。さあ、これらを使ってカレーを作ってみてください」と言われて、さあ召し上がれと人様に提供できるような美味しいカレーができるのだろうか?と思ってしまう。いくら良い素材が揃っていてもイメージだけではカレーは作れない。

台本もある、音楽の楽譜もカラオケもある、もちろんそれらが無償で提供されるのはありがたいことなのだけれども、自分のイメージを体現し舞台を作り上げるためにはやっぱりそこに舞台作りや役者たちを指導したりより良くするためのヒントを与えるような人的な支援が必要な気がする。上演パッケージ+ワークショップという合わせ技で一本!なような気がする。

また、コロナの時代では今回、劇団MUSICAIが「星の王子さま」をオンライン上演に漕ぎつけたノウハウ、例えばZoomを使ったリモート稽古やワークショップをしてきたことや映像化する技術も劇団MUSICAIの武器になっているはずだ。それらも上演パッケージのオプションとして加えても良いと思う。

今回、一部キャストは違えどPCの画面で「視聴」した芝居を実際に目の前で「観劇」できたことは本当に涙が出るくらい嬉しかった。春日玲さんの冒頭の場面の語りが始まった瞬間、目頭が熱くなってフェイスガードの視界が実際に曇ったほどだ。チェ・ユハさんの舞踏で扇子が開く音、風を切ってスカートがはためく音が空気を伝わって自分の五感に届いて、これこそ生で芝居を観る醍醐味だと感じた。

場面の演出もオンライン上演の時とはところどころ変わっていて、特にキツネの場面が楽しかった。私は「動く伊藤さやか」を観たのは今回が初めてだったので、とっても新鮮でわくわくした。そして初演では布を支えているだけだった役者たちが、まるでキツネの分身のように変化していた。今回の演出では王子もバラの花も分身が進んでいて見どころになっていた。

私は「役者の声や身体から湧き出るものを引き出す」ような伊藤さんの演出手法が好きだし、それによって役者たちが創り出す舞台が好きだ。そして終演後、役者たちが観客の前で演じることの喜びを口々にしていたが、それは観客にとっても同じこと。オンライン上演にこだわるのではなく、やっぱり劇場での上演を常に目指してほしいと、切に願う。

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